牛山くんは、なにやらネットでいろいろ調べているようです。
プログラミングスクールの中には転職保証があるところも多いみたいですね
転職保証ってなに?
必ず、転職させてくれるんですよ。もしも転職できなかったら、プログラミングスクールの費用を返金してくれるんです
おー そんなところもあるのかぁ。すごいねー
そんな話をしているとキャニット先生がやってきました。
転職保証は、たしかに良い面もあるのですが……実は手放しで歓迎できない一面もあるんですよ
そうなんですか? スクールを出れば就職できるってメリットしかないように感じますけど……
就職したい企業に就職できるとは限りませんからねぇ。とくにSES企業に関しては賛否両論あります
SES企業ってなに?
あーなるほど。たしかにSES企業の説明が先かもしれませんね。では、今日の講義ではSES企業について説明をしましょう。これからエンジニアを目指す人達には、是非知っておいて欲しい情報ですからね
というわけで、今回はSES企業についてのお話しです。
SES企業とは、どういう企業?
SES企業とは簡単に言えば派遣みたいなものです。「ウチからオタクにエンジニアを送りますよー」と言っている『ウチ』のほうの会社がSES企業ですね
ってことは、派遣社員になるようなものなの?
厳密にいうと派遣社員とは少し違うんですけどね。『派遣みたいなもの』と考えておいてください。働く場所は、もちろん派遣先です。A社に就職しても……働く場所は、B社だったりします。B社に行ってB社の仕事をやるんですよ
SES企業での仕事内容
SES企業での仕事はどのようなものなんですか? エンジニアの仕事ができるなら、とくに問題ないような気がしますが……
他の企業から送られてきた人たちに、重要な仕事を任せるはずはないでしょう。基本的には、簡単な仕事しか与えられませんよ
えっ……じゃあ、働きながらのスキルアップも難しそうですね
そもそも自社の社員ではない人を育てる気なんて、起こるはずがありません。人手が足りないところに配置されて、やることをやってもらったら契約終了です
契約が終了したら、どうなるの?
別の派遣先に行かされるので、またそこでも同じような仕事をする。その繰り返しですよ
なんか、夢がないなー
SES企業に入るメリット
では、SES企業に勤めるメリットをお話ししますね
ここまでの話の流れだとメリットなんか何もないじゃん
いえいえ、そうでもないんですよ。SES企業に勤めるメリットはこちらです
- 入りやすい
- 残業が少ない
- 経験にはなる
SES企業に入るメリット①:入りやすい
多くの人が、未経験からいきなりエンジニアになりたいと思いますが……さすがに、それは非現実的です。でも、SES企業なら未経験でも採用してもらえる可能性があります
キャニット先生がおっしゃる『経験』って、実務経験のことですよね?
そうですね。実務の経験はないけれど、プログラミングの経験はある。そういう人達のことを話していますよ。たとえば、プログラミングスクールの卒業生などですね
つまり、転職保証があるプログラミングスクールは、SES企業と繋がっているんですね
『繋がっている』というと、なんか悪いことをしているみたいじゃないですか(笑) わかりやすく言えば、SES企業がプログラミングスクールに「おたくの卒業生を紹介してね」と依頼しているんですよ。だから、A社のプログラミングスクールを卒業すれば、B社のSES企業には入りやすい。そんな仕組みです
なるほどなー
SES企業に入るメリット②:残業が少ない
SES企業で働く人の雇用主は、SES企業です。出向先の企業は、あくまでその人を借りているだけなんですね。だから、勝手に残業させられないんですよ
それはいいことだね。社員はサービス残業当たり前。月の給料だけ払っておけば、定額使い放題プラン、みたいなところあるもんね
社員使い放題定額プランって、めちゃめちゃブラックじゃないですか(笑)さすがにこのご時世、そこまでひどいところはあまりないでしょう
ちょっと極端ですけど、猫田さんが言うような『どブラック企業』もゼロではありませんからね。でもSES企業なら、そのような心配はありませんよ
SES企業に入るメリット③:経験にはなる
あとは、やはり現場で経験を積めるのがいちばん大きいですよ。たとえSES企業での仕事でも、実務経験には変わりありませんから。SES企業から別のSES企業へと転職する人も少なくありません
SES企業が絡まない普通のエンジニアになれる可能性もあるんですか?
もちろんありますよ。一旦、SES企業で働いて、その後にエンジニアとして雇用されたり、または独立したり……と、SES企業で働くのはステップアップのためと割り切っている人も多いようです
SES企業に入るデメリット
続いてはSES企業に勤めるデメリットですね
- 安い
- 職場がコロコロ変わる
- やりがいを見出しづらい
SES企業で働くデメリット①:安い
SES企業で働く最大のデメリットは、給料が安いことです
いきなり、いちばん嫌なのがきたね
具体的には、どのくらい安いんですか?
最初は年収200万円代だと思っておいたほうがいいです
…………
あのー 僕が働いている牛乳配達のアルバイトでも稼げそうな金額なんですけど
言いたいことはわかりますよ。でも、これが現実です。もちろん何年も同じSES企業に勤めれば、給料が上がるところもあるでしょう。でも、400万円代になれば御の字。そういうレベルです。通常のエンジニアのように年収1,000万円超えのような夢はありません
夢がないなー
だから、SESとして働くのは、あくまで通過点と捉えないと厳しいですよ
SES企業で働くデメリット②:職場がコロコロ変わる
2つめのデメリットは、職場がコロコロ変わることです
これはデメリットなんでしょうか?
まぁ、人によりますけどね。人によっては「新鮮でいい」と考えられる人もいるでしょうが……「慣れるまでは疲れる」と考える人も多いですよ
たしかに。あと、自分の仕事に愛着が湧きにくいかもしれませんね
SES企業で働くデメリット③:やりがいを見出しづらい
3つめのデメリットは、自分の仕事にやりがいを感じにくいことです。出向先での仕事ですから、たとえ大きなプロジェクトに関わっていたとしてのプロジェクトの全貌は見えにくいんですよ
同じ職場で働いているとはいえ、部外者みたいなものだもんね
やるべきことをやったら他の職場に移動するとなると……プロジェクトの行方すら知らないままかもしれませんね
たとえば、何に使うんだかよくわからないネジを延々と作る仕事には、なかなかやりがいを持てませんよね。 でも、自分の会社でスペースシャトルを作っていて、シャトルに使われるネジを作っているのならやりがいは持ちやすいんですよ。そういう話です
SES企業の見極め方
ここまでの話だと、SES企業には行きたくないって人も多いですよね? SES企業の見極め方などはないんですか?
ありますよ。勤務地が書いてなかったら、SES企業の可能性が非常に高いです
そっか。どこに飛ばされるかわからないから、勤務地はSESの企業側も言えないんだ
しれっと『都内』とだけ書いてあったりします(笑) でも、最初から「ウチはSES企業ですよ」と名乗っているところも多いですよ
プログラミング初心者にもわかりやすいSES企業の解説:まとめ
というわけで、今回はSES企業について紹介しました
なんか嫌な面ばかり印象に残ったなー
そういう人も多いかもしれませんね。でも、さすがに「SES企業は最高だ! みんなでSES企業に行こう!」とは言えません
あくまでステップアップの一環として捉えないと、ですね
そのとおりです。SES企業での経験を活かして、ステップアップするのが正解だと思いますよ。ただ、徐々にSES企業にも入りにくくなってきていますので、今後はプログラミング業界全体の風潮も変わってくるかもしれません